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題名:DVD 飢餓海峡 名前:もち
2017/06/05(Mon) 10:40 No.868 


868の画像を原寸大表示します 水上勉の小説を映画化した
「飢餓海峡」
公開時は私が10代半ばの頃になる。
そんな、そこらのガキの感覚で此の大作を
理解できるわけがない。社会の機微や人間
の心理の複雑さが分かるワケ無いわなぁ〜と
今更に思ってみる。

左幸子が正直、気持ち悪かった。
それが後の今まで持っていた映画の印象だった。
長年観返したいと思いながらいずれ買うからと
縁が無く来たんだけれど、
先日ツタヤで見かけて思わず借りてしまった。

1965年頃の映画だから、
出演者の99%は既に亡くなっている。
終戦後の混乱期に網走刑務所を出所した二人組
と知り合った若き日の三国連太郎が演じる犬飼、
二人組は悪の習性が抜けきれず強盗殺人に放火
までして急いで内地に渡るから犬飼に船を調達
して来いと命じます。

時はマリー台風による津軽海峡、洞爺丸の転覆
事故に絡みますから昭和29年となるのでしょう。
強盗殺人犯の追手をすべき警察は当然に、この
事故処理に総力が尽くされ手がまわりません。
その処理も終盤となり残された遺体が男の二体。

函館警察の刑事、伴淳三郎は強盗犯では無いかと
直感します。
目撃情報から三人組、ひとりは背が高く髭があり
関西訛りがある男の其の後の消息がつかめない。

その男、犬飼は三人で逃亡するために小舟で津軽
海峡を渡る際にトラブルがあったのでしょう。
結局、彼一人が盗んだカネを手にして逃亡する
ことになります。
途中、大湊で知り合った左幸子が演じる杉戸八重。
気のいい娼婦で人懐っこく怯える犬飼を店に招き
入れ、ひとときを二人で過ごすことになるのですが
その際に犬飼の指の爪をハサミで切る辺りが時代を
感じさせます。
八重「あんた、親指をケガしとるね

逃亡の犬飼は先を急ぐあまり泊りもせずに八重から
離れるのですが、バッグから大枚の現金を鷲掴みに
して
「あんたイイ人や、これやるさかいなんかに使って
と、洞爺丸事故が報道された新聞紙に包んで八重に
渡します。

この際の長い人生の、ほんのひとときの出来事が
其の後の不幸な女の心の支えとなるのです。
犬飼の親指の爪を包んで後生大事に柳行李の奥に
しまい、再び会って礼を言いたい一念で生き延び
ようと借金を返し人の多い東京に出ます。
人が多ければ会えるかもしれない、その一念。
それから何年か過ぎたある朝の新聞に、何気なく
目にした社会貢献で著名人となった男の写真が
掲載されたのを見て八重は愕然として確信します。
「犬飼さんだ・・・

切ないですね、地方の生きるのも大変な地域に
生まれ学問も無く保証も無く、頼りになるのは
我が身のひとつ、身体を売って生きるしか無い
借金して身体を売るような時代の底辺の女

飛び立つように生国に帰り本名に戻り盗んだ金
を元に社会で成功した其の後の樽見京一郎。
八重が念願の礼を言いたくて「犬飼さん」を
訪ねます。

樽見「私は樽見だ、犬飼さんなど知りませんよ
八重「うそだ、あなたは犬飼さんだ
二人の主張は嚙み合いません。
ただ一言、礼が言いたくて来たんですと告げる
八重。
舞鶴、海も近いのでしょう、
樽見が窓を閉めようとしたとき八重がその指先
を見つめ、「やっぱりあなたは犬飼さんだ!!
声を上げる八重を強く引き寄せて樽見は殺して
しまうのです。

上映時間が三時間を少し超える長編です。
ラストシーンは犬飼の社会からの転落への恐怖
からなのでしょうか、それとも其れほど愛して
くれた女への自責の念でしょうか。
事実は不明です。

生まれてきてから、なにひとつ幸せの訪れなど
感じることが無かった気の良いひとりの女への
詫びる気持であって欲しい。
死ぬ思いで渡った津軽海峡に身を投げて、
もう一度、大湊の出会いのひとときから始め直
したいと犬飼が願ったと思いたいですね。



いま、
この年齢になり見返すと左幸子の名演に感動します。
終盤、高倉健が刑事役で登場ですが当然若いですね。



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